FAN ENGAGEMENT
2024シーズン to Cマーケティング戦略
- JリーグのtoCマーケティング戦略とは
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スタジアム観戦を起点として、全60クラブのファンやサポーターを増やしていくマーケティング活動の総称である。具体的には、Jリーグと各クラブが連携し、JリーグIDを軸として「認知→関心→来場→リピート→定着」という一連の顧客体験を向上させる取り組みを実施している。
2024シーズンは、Jリーグを知っていても観戦経験のない認知未利用層を「重点セグメント」とし、年に1~2回来場いただくライト層ファンに転換することに注力した。そのための施策として、国立競技場開催や大規模招待、IPコラボに2023年以上の事業予算を投下し、新たにスタジアムへ足を運んでいただく獲得型の施策を強化した。また、前年に引き続きローカル露出戦略においても、サッカー番組を通じた関心想起に加え、各クラブが通常時より多い入場者数を目標とした注力試合の集客サポートにも力を入れた。2019年を超える過去最高の入場者数と、興味関心層の拡大を目指した。
各施策結果
- マーケティングKPI
- 2024シーズンの公式試合の年間総入場者数は、イレブンミリオン(1,100万人)を達成し過去最高を記録した2019年を超え、歴代最多となる12,540,265人で、前年比114.4%、2019年比113.6%となった。
大きな要因の一つはクラブ数の変更で、J1リーグからJ3リーグまでの全カテゴリーが20クラブ制となり、J1リーグの試合数が「306」から「380」に増加したことである。後述する要因と相まって、J1の総入場者数は2023年から約192.3万人増加している。- ※1試合平均入場者数に関しては、全カテゴリで前年比から伸長している
- 9セグ調査結果(スタジアム観戦層、高関心層)
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Jリーグはファン層の拡大に向けた顧客戦略を策定するにあたり、マーケット全体の把握や施策の効果測定をより精緻に実施するため、顧客起点マーケティングのフレームワークである9segs®調査を2021年度から実施している。
調査は5層の「顧客ピラミッド」に関心度の要素を追加したマッピングであり、スタジアム観戦においては、1年以内のスタジアム観戦意欲、前シーズンからの観戦回数、観戦経験、Jリーグの認知を基に、9つの層に分類を行っている。調査は全国の男女20~69歳を対象にインターネットを通じて実施した。調査時期の季節要因におけるスコアの変動があるため、調査実施時期である6月と11月でそれぞれ昨年と比較をする。2024年のスタジアム観戦層のボリュームは前年と比較して6月期調査で7.6%→8.2%(+0.6pt. 、前年比108%、推計40.0万人増)、11月期調査で7.9%→9.3%(+1.4pt. 、前年比117%、推計93.3万人増)と増加している。リーグ戦・カップ戦などJリーグ公式試合の総入場者数は2023年の10,965,170人から12,540,265人に増加しているが、これは同じ人が観戦する頻度が増えただけでなく、観戦する人のボリュームも増加している証左といえる。
また、高関心層のスコアも6月期調査で17.3%→18.5%(+1.2pt. 、前年比107%、推計80.0万人増)、11月期調査で16.7%→18.0%(+1.3pt. 、前年比108%、推計86.7万人増)と、こちらも順調に増加しており、引き続き観戦に対する関心を増幅することに成功した。特に関東と関東以外に分類した際に、どちらの関心度も向上しているが、特に関東以外の関心度の向上が顕著で、ローカルでの露出増加や、新スタジアムのオープンが呼び水になっている様子がうかがえる結果となった。 また、重点セグメント(認知未利用・離反の高関心層)のボリュームは6月期調査では11.8%→12.1%(+0.3pt. 、前年比103%、推計20.0万人増)、11月期調査は前年と同じ10.6%と横ばいになったものの、スタジアム観戦層・高関心層への転換が進む中で重点セグメントのボリュームも維持ができている状態にある。※推計人数は総務省統計局 人口推計 2024年6月1日現在確定値 総人口のデータを使用。20-60代でスポーツに関心が無い方を除いた総数が約6,667万人、1%が約66.7万人として推計した
- 各地域におけるサッカー情報の露出量増加と集客注力試合の盛り上がり
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Jリーグが掲げる2つの成長戦略の一つである「60クラブがそれぞれの地域で輝く」の実現に向けて、日本サッカー協会(JFA)とJリーグは、2023年4月より各地域のサッカー協会やその地域のJクラブ、各ローカル放送局と連携し、サッカー番組「KICK OFF!」の放送を開始。2024年4月には放送地域が拡大し、32地域47都道府県で放送されている。
プロジェクト2年目を迎えた2024シーズンは、各クラブが通常時より多い入場者数を目標とした集客注力試合のサポートに力を傾けた。クラブとJリーグスタッフが連携し、ローカル放送局を中心とした地元メディアに告知・集客面でご協力いただいた結果、リーグ戦の1試合平均入場者数は46クラブで2023年を越え、うち16クラブで史上最多を記録した。リーグ戦 1試合平均入場者数 史上最多更新クラブ
- THE国立DAYのブランド化と集客貢献
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2024シーズンは、国立競技場で開催されるリーグ戦を「THE国立DAY」と銘打ち、明治安田J1リーグ12試合、明治安田J2リーグ1試合の計13試合を開催した。
前年に引き続き、国立競技場での試合開催には、以下2つの狙いがある。
①普段ホームスタジアムに足を運ぶことが難しい在京ファン・サポーターに対しての観戦機会の提供や、首都圏におけるファンベースを拡大するというクラブ側の狙いと、
②アクセスや利便性の高い23区内のスタジアムでの開催を通じて、メディア露出の拡大や、年に1~2回来場するライト層ファンを育成する
というリーグ側の狙いである。国立競技場でのリーグ戦は、2月25日の東京ヴェルディvs.横浜F・マリノスを皮切りに13試合を開催。合計で654,165人(1試合平均50,320人)にご来場いただいており、リーグ戦総入場者数の5%を占めている。開幕戦で53,026人を集めた東京V、クラブ史上初となるJ1での戦いに際して、リーグ戦4試合を国立競技場で開催したFC町田ゼルビアの両クラブは、同競技場での試合開催をきっかけにJリーグIDを獲得、それぞれのホームスタジアムである味の素スタジアム、町田GIONスタジアムへの集客にもつなげた。
また、リーグ戦以外では、11月2日に行われた2024JリーグYBCルヴァンカップ決勝の名古屋グランパスvs.アルビレックス新潟には、決勝史上最多となる62,517人が来場。FUJIFILM SUPER CUP(FFSC) 2024、プレシーズンマッチを含めた全17試合の平均入場者数は約5.1万人だった。
国立競技場での試合に際しては、さまざまな演出、人気コンテンツとのコラボレーションを実施。FFSCのヴィッセル神戸vs.川崎フロンターレではにじさんじ、横浜F・マリノスvs.セレッソ大阪ではちいかわとのコラボレーションが実現、新たなファン・サポーターの獲得につながった。
©J.LEAGUE
©nagano / chiikawa committee
- 新スタジアム効果
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2024シーズンは、広島・長崎・金沢で新スタジアムがオープンした。
サンフレッチェ広島のホームスタジアム・エディオンピースウイング広島では、リーグ戦19試合中18試合の入場券が完売。総入場者数も486,579人 (1試合平均25,609人、前年比159%) となり、臨場感抜群のサッカー専用スタジアムで躍動する選手のプレーを後押しすべく、県内外から多くのファン・サポーターが足を運んだ。
また、10月6日の大分トリニータ戦がこけら落としとなったV・ファーレン長崎のホームスタジアム・PEACE STADIUM Connected by SoftBankには、大分戦を含むリーグ戦3試合とプレーオフ1試合、計4試合で1試合平均19,223人が来場。2023年のリーグ戦1試合平均入場者数(7,300人)の2.6倍を超えるファン・サポーターが集まり、盛り上がりを見せている。
金沢においても、2024年2月に北陸初のサッカー専用スタジアムとなる金沢ゴーゴーカレースタジアムがオープン。ここをホームスタジアムとしているツエーゲン金沢のリーグ戦1試合平均入場者数は5,435人と、前年比で129%に伸長している。新スタジアムがオープンしたことで、来場者の満足度も上昇している。Jリーグで定期的に実施している来場者を対象としたアンケート調査では、とりわけ観戦前後の体験 (スタジアムまでのアクセス) やスタジアムの設備・サービス (ピッチまでの距離・大型ビジョン・悪天候時の観戦環境) におけるスコアが上昇しており、ファン・サポーターに対して価値の高い観戦体験を提供できていることがうかがえる。
エディオンピースウイング広島
PEACE STADIUM Connected by SoftBank
金沢ゴーゴーカレースタジアム
- 「推し」選手づくりと「JリーグID」お気に入り選手登録
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Jリーグの各種サービスが利用できる共通会員ID「JリーグID」では、お気に入りクラブの登録に加えて「お気に入り選手」の登録ができるようになった。この機能を活用した新サービス「推し選手動画」ではLINEミニアプリ(Jリーグ公式アカウントや一部クラブの公式アカウント)上で、登録したお気に入り選手のプレー動画を楽しむことができるようになり、来シーズンからはJリーグ公式アプリ「Club J.LEAGUE」でも選手ごとのプレー動画を配信予定となっている。昨今の推し活のカルチャーをJリーグの「選手」でも取り入れていくことによって、より広い層の、より多くのファン層の獲得を目指していく。