SEASON REVIEW 2024

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MANAGEMENT

地域におけるスタジアムの在り方

Jリーグが開催する各試合、すなわち「作品」を生み出す舞台であるスタジアムの在り方について長年検討を続けてきた。
スタジアムの目指すべき姿の一つとしてプロフィットセンター化が挙げられることがあるが、特に地方都市においては、大規模な民間投資を呼び込めない限り、実現の難易度はかなり高いのが現状である。そこでJリーグでは数年前から、クラブの施設担当者を含めたワーキンググループ(WG)を開催し、スタジアムにどのような施設や機能を整備すれば地域住民にとって「かけがえのない施設」になるのか、また、当該地域に対してスタジアムの「存在価値(非財務価値)」を示すことができるかについて、検討を重ねてきた。「地域のみんなが活用できるスタジアム」の実現を目指し、今後も研究や議論を続けていく。

  • ・国内外の先進事例の調査・研究
  • ・各分野の専門家へのヒアリング
  • ・専門家による勉強会の開催

モデルケースクラブにおける検討

湘南ベルマーレ:地域交流の拠点としてのスタジアム

「まもる」(防災)、「はぐくむ」(医療・健活)、「たのしむ」(スポーツ、ライブエンターテインメント、地域交流イベント)、「うけつぐ」(地域の歴史・文化の継承)の4つのテーマを基に、それぞれのテーマに応じた施設・機能をスタジアムに整備し、地域の防災・健康・スポーツ・エンターテインメントの地域交流の拠点を目指す。

©株式会社梓設計

ファジアーノ岡山:地域のスポーツと健活の交流拠点としてのスタジアム
総合型スポーツクラブとして「地域のスポーツ力の向上・普及」への寄与を目指し、新サッカースタジアム建設の際に既存の総合スポーツ施設の再開発・近代化をテーマとする。更に、医療クリニック・リハビリ施設やアスリート食堂などを併設し、「総合トレーニングセンター」としての新たな価値創出も目指す。また、各種スポーツ・食育料理教室の開催、医療クリニック・リハビリ施設の地域住民への解放、更に、ランニングコース・ステーション新設等により、新サッカースタジアムを含むスポーツコンプレックスが地域の「スポーツ&ウェルネス」の交流拠点となることで、収益性だけでなく社会的価値向上を目指し「地域の健活活動」へ貢献していく。

目指すべきは、「地域のみんなが活用できるスタジアム」

防災機能の強化
・有事の際の避難所としての機能を整備する
(要件:電力の自立、生活用水の確保、通信の確保、生活スペース(トイレ、シャワー、風呂、ベッド等)の必要数の確保、医療施設の併設、物資の備蓄、ユニバーサル・デザイン)
医療施設の併設
・スタジアムに地域のアスリートから高齢者までを対象とした高度なスポーツ医療を提供できる「スポーツ医療&リハビリセンター」を併設する
スポーツコンプレックスとしての再開発
・地域の中高生、実業団、プロ選手等の全アスリートを対象とした「滞在型総合トレーニングセンター」を整備する。
・地域の住民の健活を後押しできるインドア・アウトドアスポーツ施設、ウエルネス施設、スポーツ・料理教室施設、ランニングステーション等を整備する
民間投資・公共投資の呼び込み
・公共施設との併設(役所、図書館、美術・博物館等、文教施設、MICE施設等)
・民間施設との併設(商業施設、住宅施設、観光事業施設等、オフィス、データセンター等)
WGアドバイザー 明治大学商学部 准教授 澤井和彦氏による総括コメント
自治体が財政難と少子高齢化・人口減少への対策に追われる中、「多目的複合化スタジアムによる地域経済の活性化」といったコンセプトに疑問が持たれている。WGではこうした状況を踏まえ、「サッカー」ではなく「地域社会」を主語にしたスタジアムの在り方を考え、防災や医療といった公共施設としての複合化の可能性について検討してきた。
Jリーグの強みはオリンピックのような一過性のイベントではなく、地域に根差した永続的な人的・社会的資本になり得ることだろう。オリンピックは一瞬だが、Jリーグはそれぞれの地域で永遠に続く。防災や医療は、施設だけでなく多くの「人」が関わることで有効に機能する。地域における人的・社会的資本としてのJクラブの強みを生かした地域社会のためのスタジアムを考え、発信していく必要があると思う。

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