SEASON REVIEW 2025

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MANAGEMENT

Jリーグの海外事業

Jリーグ海外事業の概要

Jリーグは1993年の開幕以来、Jリーグの理念である「国際社会における交流及び親善への貢献」に寄与すべく、特にアジアサッカー全体の発展を視野に入れて「Jリーグアジア戦略」を推進してきた。
2023年以降、Jリーグの「次の10年」の成長戦略として、「アジアで勝ち、世界と戦うJリーグ」「欧州リーグ選手とJリーグ選手による日本代表」「全Jクラブの売り上げを1.5-2.0倍へ」と目標を掲げ、成長テーマを2軸「60クラブが地域で輝く」「トップ層がナショナルコンテンツとして輝く」に定めた。
この、「次の10年」で目指す姿を実現するには、Jリーグのグローバル化は必須となる。現在の世界基準である欧州フットボール市場とJリーグ・Jクラブのタッチポイント(接点)を様々な領域で増やし、情報・人材・お金の流れを作り、Jリーグの戦略を加速させるため、欧州拠点を設置、取り組みを推進している。また、各Jクラブと連携し、クラブの海外進出をサポート。2025年は、年間約30クラブが、約100回にわたる海外事業に関連する渡航をし、海外クラブとの提携、育成や経営ノウハウのシェア、またクラブの海外活動への日系・現地企業からの協賛獲得など、国内事業に加えて、新たな機会としての海外事業の拡大に取り組んでいる。

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グローバルでのプレゼンスをあげる活動

ワールドサッカーフォーラム(WFS)香港への参加

毎年欧州を中心に、世界各国で開催されているワールドフットボールサミットが、2025年9月、アジアで初めて香港で開催された。本イベントに、Jリーグもパネラーとして招待を受け参加。

相田鉄弥執行役員(海外事業領域)が、Jクラブの鹿島アントラーズと共にパネルディスカッションに登壇し、サッカービジネス界におけるサステナビリティアクションについてセッションを実施した。

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ASEAN日本政府代表部(@ジャカルタ)のプロジェクトである、スポーツ&SDGsのフォーラム参加

ASEAN日本政府代表部による同プロジェクトは2024年度からスタートし、2025年度はインドネシア、カンボジア、タイの3か国のサッカー協会、サッカーリーグ、またスポンサーなどのステークホルダーを対象に、Jリーグ・Jクラブのサステナブル関連活動についてシェアするワークショップが開催された。Jリーグ、Jクラブは各ワークショップに招待を受け、Jリーグの事例についてプレゼンテーションを実施した。

また、4月には、シンガポールで開催された「ASEAN Football4SDGsフォーラム」に招待を受け、スポーツ庁、ASEAN日本代表部の他、アセアン各国のスポーツ庁役員、各国サッカー協会、リーグ、クラブ、スポンサーが参加した。Jリーグはフォーラムで基調講演を務め、各国参加者からは、Jリーグの経営や気候アクションの取り組みに多くの質問が寄せられた。

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アジア戦略

アジア、特にASEAN各国の経済成長、人口増加を見据え、Jリーグが欧州リーグに肩を並べる成長をするためには、アジア全体のサッカーレベルが競技面、事業面双方で大きく成長することが必須となる。
Jリーグは2003年以来、アジア戦略を掲げ、各国リーグとの戦略的パートナーシップを継続し、様々な領域で各国サッカーとの連携強化を推進している。

2025年も多くの海外リーグ関係者が来日し、JリーグやJクラブ、スタジアムを訪問。双方のリーグ経営について意見を交わし、Jリーグの知見をシェアする機会を得た。

また、Jリーグが特別会員であるSHC(スポーツヒューマンキャピタル)では、今年英語コースを開講し、Jリーグパートナーリーグを中心としたアジアの各国からも、約8名がこのコースに参加。国内参加者と共に学び、交流を深めた。

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Jリーグパートナーシップ協定国一覧
リーグ名称 締結年
タイリーグ 2012
ベトナムプロフェッショナルフットボール 2012
ミャンマーナショナルリーグ 2012
カンボジアナショナルリーグ 2013
シンガポールSリーグ 2013
インドネシアリーガ1 2014
マレーシアリーグ 2015
サウジプロリーグ 2024

※上記各国リーグの国籍を有する選手は、試合エントリー時において、外国籍選手ではないものとみなされますが、戦略的パートナーシップ協定対象国となるサウジアラビアの国籍を有する選手はこれに該当しません

海外放映

2025年も前年に引き続きアジアを中心に世界約20カ国で各地域の放送局による放映を実施した。
前年からはベトナム(HTV)とブラジル(Canal GOATおよびX Sports)が新たに加わり、ブラジルでは明治安田J1リーグに加え、2025JリーグYBC ルヴァンカップの放映も行われた。 ベトナムを始めとした各地域では現地でのパブリックビューイングなどのプロモーションも実施され、放映を通じた各地域での取り組みがさらに活発化した。
その他の地域においては、明治安田J1リーグ各節2試合を国際版の公式YouTubeチャンネルで配信し、引き続き全世界でJリーグが視聴できる環境を継続して提供した。

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海外のファンエンゲージメント(SNS発信)

海外ファンに対しても精力的に情報発信を行っており、SNSの総フォロワー数は300万人を突破した。アジア・ヨーロッパ・アメリカのKOL(インフルエンサー)やメディアとのコラボレーションも拡大し、新規ファン層へのリーチ数増加に注力している。

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※すべて11月末時点

インバウンド促進(インバウンド事業)

インバウンド集客について

Jリーグの観戦体験の魅力を海外の方にも知っていただき、Jリーグのファンを増やすことを目的に、各クラブと協力しながらインバウンド集客に注力している。

具体的には、インフラ面では会員登録なしでチケットを購入できるサイトの構築・導入や、Jリーグクラブのチケット情報を集約したホームページの制作を実施した。また、プロモーション面では、デジタル広告配信、海外版SNSによる情報発信、海外にリーチ可能なインフルエンサーとのタイアップ、チラシの配布・設置などを行っている。

その結果、英語でのチケット販売枚数はリーグ戦において、2024年は約21,000枚だったが、2025年は約34,000枚(昨対160%)まで増加している。

※QUICKぴあ並びにぴあインバウンドチケット販売サイトで販売したリーグ戦の枚数が対象。

来場者の出身国・地域は、多い順に香港、アメリカ、オーストラリア、イギリス、ドイツとなっている。

※ぴあ社のサービスであるQUICKぴあ並びにぴあインバウンドチケット販売サイトで販売したリーグ戦、ルヴァンカップ、ACLエリート、ACL2の試合が対象。

英語でのチケット販売を実施しているクラブ一覧

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インバウンド調査

インバウンド向けのチケットが多く販売されているスタジアムにおいて、各クラブ協力の下、来場した外国人向けに調査企画を合計6回実施。
結果として、約80%の方が初来場で、チケット代以外のグッズ・飲食等に約9000円を消費、ユニフォームへの需要が特に高いことが分かった(N=700)

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香港展示会

多くの方が香港からスタジアムに来場していることを受け、7月には香港スポーツ&レジャーエキスポに出展。約7000名が来場し、さらなる海外からのファン・サポーター獲得に向けて、Jリーグのプロモーションを実施した。

実施事項

  • ・アンケート調査
  • ・海外版SNSのフォロー促進企画
  • ・「myTV Super」(現地放送局)との共同でステージイベント

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Jクラブの海外事業のサポート

「世界と戦うフットボール」「海外からの収益獲得」という成長戦略の実現に向けて、各Jクラブの海外でのプレゼンスをあげていくことも重要な戦略となる。25年度は約30クラブ近くが年間約100回にわたり、海外渡航による事業活動を推進した(回数は育成遠征をのぞく)。Jリーグも様々な形で各クラブと連携し、海外事業をサポートしている。

Column:J. LEAGUE Europeの設立

株式会社Jリーグインターナショナル 代表取締役社長 山崎 和雄

欧州拠点 J. LEAGUE Europeを核にJリーグの国際展開を加速

Jリーグは、初の海外拠点となる「J. LEAGUE Europe」をロンドンに設立し、2025年1月に始動した。
今や多くの日本人選手が欧州5大リーグや強豪クラブで躍動し、ユース世代が世界を目指すことは当たり前の光景となった。
しかし、クラブ経営、GMやSDといったフロント部門、そして監督などの指導者に目を向けると、Jリーグはまだ世界トップレベルの人材やビッグクラブを輩出するに至っていない。

この「選手」と「クラブ組織」のギャップをどう埋めるか。 鍵は、経営者から現場まであらゆる階層が日常的に世界を意識することにある。
世界基準である欧州フットボール界とのタッチポイント(接点)を増やし、意識を変え、行動を変え、結果を変える。 欧州拠点を核に、JリーグとJクラブの国際化を加速させ、日本サッカー全体の強化・発展につなげること。それがわれわれのミッションである。

欧州キャンプ視察を皮切りとした「世界で戦う」ための意識改革

最初の具体的なアクションとして、7月に欧州キャンプの視察ツアーを実施した。 欧州では、夏季プレシーズンに100以上のクラブがオーストリアの山岳地域などの冷涼な環境に集い、キャンプを行うのがスタンダードだ。そしてシーズン移行を機に、われわれもこの「欧州クラブのコミュニティ」へ飛び込むべきだと考えた。

選手・スタッフを含む60〜70人規模のチームが2週間、欧州のマーケットに身を置く意味は大きい。 単なる練習試合にとどまらず、フロントや指導者間の交流、日常的なスカウティング活動が行われる中で、いやが応でも「世界でどう戦うか」を肌で感じることになるからだ。

視察にはJ1からJ3までの20クラブが参加し、確かな手応えを得た。2026年夏には、複数のクラブが実際に欧州キャンプを行う見込みとなっており、これはクラブの行動変容における大きな成果だと考える。

「欧州クラブと試合をすれば、選手を引き抜かれるのではないか」と危惧する声もある。しかし、逆もまたしかりだ。 Jクラブが現地でスカウティングを行い、無名の有望選手や、将来の名将候補である若手指導者を獲得しに行けばいい。欧州には、強豪クラブや名将の下で学んだ優秀な指導者が数多く存在する。彼らが世界的名声を得る前であれば、Jクラブでも獲得のチャンスは十分にある。欧州キャンプという機会は、双方にとってのショーケースなのだ。

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欧州キャンプ視察の様子

海外指導者招聘プロジェクト 世界的指導者から「世界基準の実現に何が必要か」を学び取る

J. LEAGUE Europeでは、データ分析によるプレースタイルの可視化や、欧州クラブとの提携支援、MCO(マルチ・クラブ・オーナーシップ)とのマッチングなど、多角的な施策を展開している。 その象徴といえるのが、Jリーグ・グローバルフットボールアドバイザーへのロジャー・シュミット氏の招聘だ。

ドイツ、オランダ、ポルトガルなどで数々のタイトルを獲得し、「ハイインテンシティ・フットボール」を掲げる世界的指導者が、Jリーグの成長戦略に共鳴してくれた意義は大きい。 シュミット氏は、明確な哲学の下、高い強度のプレーを選手に落とし込み、チーム全体が連動して戦うスタイルを構築する。彼にとって「勝利」は目的であると同時に、選手を育てる最良の「手段」でもある。年齢や経験ではなくパフォーマンスを基準に若手をちゅうちょなく起用し、高い強度の中で成長させることで、選手の市場価値を高め、クラブに高い移籍金をもたらす。

ピッチでの成功、若手の育成、そしてビジネスの拡大。 この「好循環」こそが、今のJクラブに必要なものだ。彼自身が体現する世界基準の哲学をJリーグ全体へ波及させるべく、今後もこうしたプロジェクトを強力に推進していきたい。

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ロジャー・シュミット氏による指導者向けセッションプログラム

※掲載情報は2025年12月22日時点のものです

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