SEASON REVIEW 2025

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SUSTAINABILITY

Jリーグ気候アクション

2025シーズンのJリーグサステナビリティ

「未来の地球に、いいパスを。」各種アクション

Jリーグは「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」という理念の下「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というJリーグ百年構想を掲げ、ホームタウンで多様な活動を推進している。
サステナビリティ領域での取り組みにおいては「地域コミュニティの醸成(COMMUNITY)」、「インクルーシブな社会へ(PEOPLE)」、「気候アクション(PLANET)」という3つの枠組みを定義し、Jリーグ・各クラブが活動している。
特に2025シーズンは、昨今の気候変動による温暖化や災害の激甚化を受けて「COMMUNITY」と「PEOPLE」の礎となる「PLANET」を守り、次世代にスポーツができる環境をつなぐべく、「気候アクション」をこれまで以上に推進した。

Jリーグ気候アクションの現在地

「意識が変わる」から「行動が変わる」フェーズ移行に向けたアクション

2024シーズンに制作した「Jリーグ気候アクションのロードマップ」に基づき、2025シーズンは「意識が変わる」フェーズから「行動が変わる」フェーズへの移行に向けて、複数のアクションを行った。

①子ども、ファン・サポーター向けの「意識が変わる」活動

未来を担う子どもたちに向けた啓発活動として、2024年に始動した、Jリーグ特任理事の小野伸二さんが小学生を対象に「サッカー教室」と「サステナトーク」を行うプロジェクトである「Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアー for a Sustainable Future supported by 明治安田」を継続し、今年度は15回実施(2026年1~3月の実施予定3回を含む)。
6月に気候アクション月間を設け、各Jクラブの取り組みを各自の「点」からリーグとしての「面」として発信することで、ステークホルダーの「意識が変わる」ことを目指した。 また2025シーズンはJリーグ気候アクションアンバサダー制度と、小学生向けに「Jリーグ環境教育授業」を新たに始動したことで、子ども向けの活動をさらに加速させた。

②クラブにおける取り組みの推進

今後の各クラブにおける活動推進を具体的に支援するため、「Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度」を創設。

③各クラブにおける、気候アクションの活動評価基準を設定

サッカークラブの気候アクションを数値化し、その進捗や目指すべき方向性を一目で把握できる仕組みである、「Sport Positive Leagues」への2026年からの参画を4月に決定し、Jリーグ独自の評価基準を設定。
2026特別シーズンから運用を開始する。

ロードマップ

SPLとは

SPLとは、サッカークラブの気候アクションを数値化し、その進捗や目指すべき方向性を一目で把握できる国際的な評価制度である。
ポリシー、エネルギー、廃棄物、生物多様性、教育など気候変動対策にとって重要な12項目について、独自の評価基準マトリクスを用いてスコア化し、リーグテーブル形式で結果を公表する。

SPLへの参画による期待効果
Jリーグは全60クラブでSPLに参加し、クラブが互いの取り組みを参照しながら改善できる環境を整える。取り組みが可視化されることで、ファン・サポーター、自治体、企業などのステークホルダーにとってもクラブの環境貢献を理解しやすくなり、地域に根差した気候アクションの深化が期待される。JリーグはSPLへの参画を通じ、スポーツを取り巻く環境を持続可能な形で次世代へつなぐ活動を一層強化していく。
Sports Positive Leagues創設者 クレア・ポールさんコメント

Jリーグにおけるサステナビリティとレジリエンスの新時代

JリーグへのSport Positive Leagues(SPL)フレームワークの導入は、日本のフットボールにとって重要な転換点となっている。世界的には、トップスポーツが気候・環境リスクを外部要因ではなく、事業運営・財務・レピュテーションの最優先事項として認識している。リーグやクラブにとって、構造化されたエビデンスベースのサステナビリティフレームワークを採用することは、環境面の前進のみならず、ガバナンスの信頼性や商業面のレジリエンス 、そして長期的なファン・サポーターの信頼確保につながっている。

JリーグにとってSPLは、全Jクラブの気候・サステナビリティの取り組みを測定・改善・発信するための統一的なアプローチを提供している。基準や指標が明確で、各クラブがそれぞれの状況に合わせて進められるロードマップが示されていることが特徴である。日本ではクラブ間でリソースやインフラ、環境への取り組み度合いが大きく異なっているからこそ、SPLは前向きな変化を促しつつ、より野心的な取り組みを後押ししている。

さらに、この取り組みはJリーグをアジアの持続可能なスポーツの先進事例として位置づけるだけでなく、プレミアリーグやブンデスリーガなど、世界の主要リーグとの歩調を合わせていることを示している。サッカーはその規模、文化的影響力、若い世代との強い結びつきを通じて、地域社会で具体的な行動を生み出す力を持っている。SPLの採用により、Jリーグはサステナビリティが単なる付加的な要素ではなく、長期的な商業的成功に不可欠であり、現代のクラブ経営、スタジアム運営、地域アイデンティティにおける戦略的要素であることを示している。

今後1年間に期待されるJリーグとJクラブの取り組み

この1年間のサポートを通じて、サステナビリティを単なるコストではなく機会として捉える意識の変化が広がっていることを実感している。クラブは、運営効率の向上、ブランド価値の強化、パートナーシップの創出、若年層とのエンゲージメントにおけるサステナビリティの役割を認識し始めている。すでに多くのクラブが、エネルギー管理、廃棄物削減、移動手段の計画、コミュニティ活動など、日々の意思決定の中にサステナビリティを組み込んでいる。

今後1年間では、SPLの考え方がクラブ戦略やガバナンスの仕組みにより一体的に組み込まれていくことを期待している。これには、データ収集の高度化、内部での責任範囲の明確化、そして環境施策 をファン・サポーターやパートナーに一貫して伝えていく発信力の強化が挙げられる。また、日本のクラブは新しい技術の試行や自治体との連携、ファン・サポーターの行動変容を促す取り組みなど、イノベーションを生み出す素地を十分に備えており、さらなる展開が見込まれている。

特に、Jリーグ代表者やJクラブ関係者と共に英国での視察に参加した際には、その高い関心、積極的な姿勢、鋭い洞察に深い印象を受けている。こうした姿勢から、Jクラブは近い将来、強固な共通基準を確立していくと確信している。互いにベストプラクティスを共有し、進捗をたたえ、各クラブの課題を支え合うことで、リーグ全体として改善のスピードをさらに引き上げることができる。基盤はすでに整っており、これからは勢い、意欲、そして目に見えるリーダーシップが求められている。Jリーグには、日本サッカーを大きく変革し、さらにスポーツ界におけるサステナビリティの国際的な基準づくりに影響を与える機会が訪れている。

※本取り組みは日本財団の助成を受けています

助成制度概要

SPLの導入に先立ち、気候アクションに関する取り組みの推進を図る目的で、「Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度」を4月に創設。第1回は2025年4月1日から2026年3月15日までに実施する活動が助成対象となり、助成総額は2億4000万円、1クラブあたりの申請上限金額を400万円とする。

助成対象事業

Jクラブが実施する気候アクションであり、SPLにおいて評価カテゴリーとして定義されている、12のカテゴリーに関する事業

  • 1. ポリシーとコミットメント、レポーティング
  • 2. 再生可能エネルギー
  • 3. エネルギー効率
  • 4. 環境負荷の少ない移動手段
  • 5. 使い捨てプラスチック削減・廃止
  • 6. ゴミの削減管理
  • 7. 水の効率的な利用
  • 8. プラントベース・低炭素食品
  • 9. 生物多様性
  • 10. 教育
  • 11. コミュニケーション
  • 12. 持続可能な調達

※本取り組みは日本財団の助成を受けています

アクション③:気候アクションアンバサダー、環境教育授業の始動

気候アクションアンバサダーとは

各クラブが取り組む気候アクションや、環境問題に関わる取り組みのアイコン役となって活動する、Jリーグ選手や選手OB。
「Jリーグ環境教育授業」の先生役も担い、授業を通じて子どもたちに働きかけることで、気候変動に対して「意識」が変わり、気候変動対策を意識した「行動」が当たり前になる社会を共に目指していく。
Jリーグ特任理事の小野 伸二さん、中村 憲剛さん、内田 篤人さんも就任している。

「Jリーグ環境教育授業」概要

子どもたちが授業を通して気候変動の現状や原因を学び、身近な行動変容を促すこと、気候アクションについて子どもたちと一緒に認知を広げ、気候アクションを応援してくれる人々を増やしていくことを目的に、Jクラブがホームタウンの小学校などで実施していく。
2025年5月に「Jリーグ気候アクションパートナー」契約を締結した東急不動産株式会社とも、Jクラブホームタウンの小学校で順次実施し、2026年6月までに5回の実施を予定している。
授業は小学校高学年を対象に、Jリーグが協賛する環境教育教材ショートアニメーション・シリーズ「FUTURE KID TAKARA」を活用しながら「Jリーグ気候アクションアンバサダー」が先生役を務め、アニメとオリジナルのワークシートを活用した内容で実施する。

関係者コメント

東急不動産株式会社
インフラ・インダストリー事業ユニット
事業戦略部 業務推進グループ(企画)
兼 政策・地域共生グループ

主任 二宮 健斗様

東急不動産では、当社の発電所がある地域をはじめ、全国の子どもたちが再生可能エネルギーを中心とした環境問題について楽しく学べるよう、環境教育プログラム「ReENE ÉCOLE(リエネ エコール)」を展開しています。2025年度も、全国の小中学生を対象とした環境教育の出前授業を、年間10回以上実施する予定です。
こうした出前授業を通じて、より多くの子どもたちへアプローチするため、クラブを通じ全国各地にネットワークを持つJリーグ様と気候アクションパートナー契約を締結し、共同で環境教育を行いました。各クラブの気候アクションアンバサダーの方々は、子どもたちから想像以上の人気を集めていました。また、サッカーと関連づけた説明やアニメの活用により、子どもたちが積極的に授業に参加している様子も非常に印象的でした。
今後も出前授業を複数回実施していく予定ですが、Jリーグ様や全国のクラブと密接に連携しながら、各地域の子どもたちに「気候アクション」の重要性や気候変動がもたらす課題について、より分かりやすく伝えていきたいと考えています。

Jリーグ特任理事(Jリーグ気候アクションアンバサダー)

小野 伸二さん

©SARCLE

僕自身Jリーグが取り組む気候アクションを学び始めたことをきっかけに、地球の現状を知り、地球の未来を変えるために何ができるかを考え行動を始めました。今回のプロジェクトをきっかけにして、たくさんの子どもたち、そして一人でも多くの方が僕と同じように地球の今を知り、学び、行動を起こしてくれることを願っています。これからの子どもがサッカーを、スポーツを思いっ切り楽しめるような未来であるように共にアクションを起こしていきましょう。

中村 憲剛さん

©ケンプランニング

未来の主役となる子どもたちが、この授業を通して地球の現状を知り、自分たちの生きていく地球環境の未来を守るために何ができるかを「自分ごと」として捉え、できることを考えて行動するきっかけになるように、僕自身も共に学び・発信していきたいと思います。

内田 篤人さん

©SARCLE

気候変動問題への取り組みや行動が当たり前の日常になるためには、皆さんも毎年感じられているこれまでとは違う異常な夏の暑さを、なぜこんなに暑くなっているのか?これからどうなっていくのか?と疑問を持っていただき、地球の今を知り、今のままでは訪れてしまう遠くない未来を知ることがとても大切だと思います。僕自身もJリーグ特任理事として気候アクションについて知り、学んだことがきっかけで、考え、行動を起こすようになりました。今回スタートするJリーグ環境教育授業がきっかけとなり、一人でも多くの方が自分のために、そして未来のためにできることを知ってもらえるとうれしいです。サッカーファミリー一丸となって取り組んでいきましょう。

Jリーグ気候アクションアンバサダー
第1回 Jリーグ環境教育授業実施
ベガルタ仙台 選手OB

富田 晋伍さん

©VEGALTA SENDAI

これまで他人事のように思っていた環境について、アンバサダーを務めることにより考えたり学んだりする機会ができ、自分自身も貴重な機会を得ることができたと思いました。

今回がJクラブとして初めての環境授業という事で、流れや雰囲気など分からない事が多く不安をもちながら迎えたのですが、関係者の方々の協力、そして松岩小学校の子供たちに救われた部分がありました。
実際サッカーをしてからの授業ということで、子どもたちとの距離も縮まり、スムーズに授業に移れたところは大きかったと思います。
授業では映像がある事で子どもたちも飽きることなく積極的に発表し、話し合いなどにも取り組んでくれていたと思います。
今回アンバサダーとして環境授業を行ったことで自分のためにもなりましたし、スポーツとしてではなく環境分野という入り口からベガルタ仙台を知ってもらう機会にもなりましたし、この活動を通して1人でも多くの人が環境問題について考えるきっかけになると期待しています。そのためには単発で終わる事はせず、継続して行う事が重要だと思います。
今後他のクラブでも授業を行うと思うので、それぞれが感じた事の情報交換も大切なのかなと思います。

第1回 Jリーグ環境教育授業実施
ベガルタ仙台 選手OB

梁 勇基さん

©VEGALTA SENDAI

今回、気候アクションアンバサダーを務めるにあたり、自分自身もここ数年の異常気象について学ぶ機会になるのではと期待しました。
実際に今地球上では、さまざまな問題が起こっていて、それがわれわれの私生活や、スポーツ選手の環境へ与える影響を改めて感じました。

気仙沼の松岩小学校で行われた環境授業では、子どもたちとのディスカッションの場面では、色々なアイデアが生まれ非常に楽しい機会になりました。

Jクラブの中では初めての実施となりましたが、大人と子どもたちが一緒になって未来について学び、考える良い授業だったのではないかと思います。
また授業の前には、校庭で一緒にサッカーをすることにより、ベガルタ仙台というプロサッカーチームの存在を知り、少しでも応援してもらえるようなきっかけもつくれたと思います。

環境分野を入り口に、子どもたちがサッカーを楽しみ、ベガルタ仙台を知ってもらえたことは、サッカーの普及活動を行うクラブにとってもヒントになるのではないでしょうか。
これからますます進んでいくであろう環境問題に、こういった活動を通じてたくさんの方々に声が届き輪が広がっていくことを期待しながら、今後も継続していく事が必要だと感じます。

第2回 Jリーグ環境教育授業実施
大分トリニータ 選手OB

松本 怜さん

この度、Jリーグ気候アクションアンバサダーとして、Jリーグ環境教育授業の講師を務めました。準備の段階では、小学生にどう伝えるべきか、グループワークをどう進めるか、予備知識をどこまで入れるべきか――不安もありましたが、Jリーグの示してくださった資料などを元にクラブや学校の先生方と話し合いを重ね、一つひとつ課題を解消しながら臨みました。
迎えた当日。小学校の多目的ホールで子どもたちを待つ間の緊張はすぐに消えました。「こんにちは!」と元気いっぱいに入ってくる子どもたちの笑顔、そして「ほんとにレイチェルや!」「7番のユニ持ってるよ!」という声。子どもたちこそが、場の空気を和やかなものに変えてくれました。
授業が始まると、子どもたちがアニメに引き込まれていく瞳、グループワークに真剣に取り組む姿に、未来を感じました。進行するうちに、彼らの表情が遊び心から真剣さへ、そして危機感へと変わっていく――その変化を目の当たりにしたとき、胸が熱くなりました。「この授業で、何かを感じ取ってくれるはずだ」と強く思いました。
もともと、気候変動という言葉は子どもたちにとって縁遠い存在だったかもしれません。しかしこの授業を通じて、「ほんの小さなことでも、行動を始めることが大切なんだ」「みんなで行動をしてみよう」「それが自分たちの未来につながるんだ」と、ほんの少しでも想像してくれたなら、それは希望の芽だと思います。
授業を終えたとき、今回、我々が子どもたちに提供できたこと、そして子どもたちが応えてくれたこと、こうした対話こそが、クラブがホームタウンで果たすべき使命なのだと私は確信しました。
彼らの笑顔と真剣な眼差しを希望に、これからも社会連携活動に取り組んでいきたいと思います。子どもたちの前向きなエネルギーに、背中を押されたような気がしています。

※掲載情報は2025年12月22日時点のものです

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