SEASON REVIEW 2025

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SUSTAINABILITY

Special Talk 水戸ホーリーホック×ガイナーレ鳥取×Jリーグ鼎談

Jリーグが2024シーズンに新設した「Jリーグ地域再生可能エネルギー助成制度」をいち早く活用し、2025年度よりソーラーシェアリング事業を開始した水戸ホーリーホックとガイナーレ鳥取。


両クラブで地域再生可能エネルギー事業の推進を担った水戸ホーリーホックの瀬田 元吾氏、ガイナーレ鳥取の塚野 真樹氏が、事業立ち上げに際しての苦労やJクラブが事業を行うことの意義、そしてこれからの展望について、Jリーグでサステナビリティ領域担当の執行役員を務める辻井 隆行を交えて本音で語った。

※ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは
農地に支柱を立て、その上に間隔を空けて太陽光パネルを設置することで、農作物の栽培と発電を同時に行うこと。
作物の生育に必要な日照を確保しながら、太陽光を使って発電を行うことで、農地を最大限に有効活用しつつ、農家の収入源の多様化と地域のエネルギー自給にも貢献する取り組みとして期待されている。

― ガイナーレ鳥取が1番目、水戸ホーリーホックが2番目に、助成金の活用に手を挙げていただきました。早期から再生エネルギー事業に取り組まれたきっかけがあれば教えてください。

塚野申請自体はわれわれ(ガイナーレ鳥取)が先ですが、GXプロジェクトの立ち上げを先に宣言されていたのは水戸ホーリーホックさんなんですよ。動き出しは水戸さんがダントツに早かったですよね。

瀬田そうですね。2024年5月15日に水戸ホーリーホックがクラブ創設30周年を迎えるにあたって新規プロジェクトとしてGXプロジェクトを宣言しました。最初はうちのGMだった西村(卓朗)が、2023年にJリーグにて辻井さんから紹介いただいだきソーラーシェアリングのことを知りました。ただ最初にお話を聞いたときにはクラブの状況などもあってすぐに行動に移すことはできなかったんです。同時期にクラブで行っていた農業の取り組みが、現在のソーラーシェアリング事業を始めるきっかけになりました。
クラブでは2021年に「GRASS ROOTS FARM」という農事業を立ち上げて、農業人口の減少や耕作放棄地の増加といった地域の農業課題と向き合っています。その取り組みの中で生まれた、環境保全を考えて作られた大豆ミートバーガーが、2023Jリーグシャレン!アウォーズで「明治安田 地元の元気賞」をいただきました。それにより地域が持つ課題と、クラブができることをより深く結びつけて考えるようになって。

©MITO HOLLYHOCK

耕作放棄地だった畑で、われわれが大豆を作り、それを加工してプラントミートを作る。そして同じ畑でソーラーシェアリングができると、より持続可能な地域づくりに寄与できるのではないかと考えたんです。
シャレン!アウォーズで賞をいただいた明治安田さんにそのお話をしたところ、とても面白いねと言っていただいたことも後押しとなり、ソーラーシェアリング事業の立ち上げを本格的に検討するようになりました。
明治安田さん以外にも、Jリーグに紹介してもらった企業や地元の銀行など、複数の方に事業に関する壁打ちをして、社会情勢への適合観点などからも筋が良さそうだということは見えてきました。
調べていくうちに、ソーラーシェアリングは減価償却が年次でできることが分かったため、運用フェーズになればキャッシュフローがある程度予測できると分かったのも大きかったです。 しかし、イニシャルコストは無視できません。われわれも予算が潤沢なわけではないので、運用フェーズの見通しがある程度立ちそうであっても、やはり新規事業にそこまでの初期投資はしづらいという経営判断があり、なかなか一歩が踏み出せずにいました。
そんなときにJリーグで助成制度が新設され、イニシャルコストの負荷も下がったことで、本格的な立ち上げに向けて動き出しました。

©MITO HOLLYHOCK

― Jリーグとして助成制度の新設にあたっては、制度設計においてどのようなな部分を意識しましたか。

辻井前提としてJリーグのサステナビリティ部には、地域と各クラブが社会的にも経済的にも環境的にも、持続可能な形で共に発展していくことに貢献したいというミッションがあります。その中で「地域の自然や文化や歴史を守っていく」ことと「再生エネルギーの普及」の両方の視点が大切だと考えていたんです。
その考えに基づいて、地域の中でのさまざまな波及効果も含めて、ステークホルダーにいい影響が広がるような形での再エネ事業を後押しできるような制度設計を意識しました。

塚野うちは2017年に芝生事業へ参入して、年を経るごとに生産面積を増やしていました。
そんな中、2022年に環境省が支援する「第1回脱炭素先行地域」に米子市と境港市が選出されたことで、行政を含め「みんなでカーボンニュートラルの実現に向けて頑張ろう」という土壌が地域にできました。
その動きの中にガイナーレのスポンサーである山陰合同銀行さんやローカルエナジーさんも参画されていたんですが、ある日ローカルエナジーさんからご相談をいただきまして。
ドイツで撮影されたと思われる、垂直型のソーラー発電パネルの間で芝生を養生している写真を持ってこられて「こんな形での芝生の生産はできるんでしょうか」と言われました。
「できるかできないかで言ったらできるんじゃないでしょうか」とお伝えしたのが、ソーラーシェアリングを知ったきっかけです。
私自身、その写真がとても印象に残りました。ソーラー発電自体には意義を感じていたものの、平地にパネルをつけて、トラブル防止のためにフェンスで囲んで…というのは、いくら土地があったとしても少し寂しい風景なのではとも感じていて。

辻井確かに農地転用をすると、農業をせずともソーラーパネルを置けるので「野立て」といわれる地面に直接パネルを置く形のソーラー発電も可能です。ただそうすると、電気はつくれるけれども農業人口は増えないし農作物もできない。地域の持続可能な発展になっているのかというと、疑問を感じる部分もあります。

塚野そうですね。それで農業とソーラー発電が両立できるソーラーシェアリングに興味を持っていたところに、辻井さんからTERRA(テラ)の東(光弘)さんを紹介いただきました。

辻井東さん、とても熱い方ですよね。

塚野まさに同じ印象を持ちました。東さんは「農業をやる人を大切にしたい」という考えを強くお持ちでして。「農業が盛んになって、農業をしている人の収入が確保されながら、売電収入もあるモデルを好ましく思う」とおっしゃっていたことに私としても共感しました。東さんに米子の耕作放棄地を見ていただいたところ「土地が平らで日当たりも良いので、ソーラーシェアリングにとってはまさに適地です」と太鼓判を押していただいたことで、意志が固まりました。
脱炭素先行地域に選ばれていたことで地域の後押しがあったのも、やはりかなり大きいです。山陰合同銀行さんのご協力もありましたし、芝生事業を行っていたことで農業委員会とのコネクションもあったため、圃場(農作物を栽培する農地)の確保も比較的スムーズにできました。さらには、電力ビジネスに関するノウハウを持つローカルエナジーさんもいる。 もうやるしかないだろうとなったときに、ちょうどJリーグの助成制度が設立されたため、すぐに手を挙げさせてもらったという流れです。

©SC TOTTORI

辻井地域のニーズや時流とうまく合致したんですよね。でも普段から地域と一緒になっていろいろなことをして、関係を築いていたからこそできたことだと思います。

― 実際に事業を始めるまでに、苦労されたポイントはありますか。

瀬田当初は2021年から農事業を行っていた圃場への設置を検討していたんですが、さまざまな事情で難しいことが分かりました。
そして新たに圃場を探す必要があったため、耕作放棄地がリストになっている耕作放棄地バンク(農地バンク)というものがあり、そこから候補地を探しました。
そしてソーラーシェアリングを行うにはその土地の地権者の方はもちろんのこと、隣接する全ての農家の方や地権者の方の合意を得なければならないため、われわれは候補地探しと調整に最も時間がかかりましたね。

辻井ホーリーホックも、ガイナーレ同様に農事業をある程度長くされていて、当時のご担当の方も地域の方ととてもいい関係を築かれていると感じていました。
一方で、ホーリーホックが手がけているのが農作物であることも一つあるのかなと。やはり口に入るものを育てる環境に対して慎重な姿勢になるのは、特に農地を保有している方や農家の方にとっては致し方ないことだと思います。
事業で扱うものの違いが、圃場の確保においてガイナーレとは異なるハードルになったのかもしれませんね。

塚野私たちは、ビジネススキームの構築が最も大変でした。最初はわれわれが主体で事業を開始するつもりだったんですが、クラブの公認会計士から待ったがかかりまして。
電力ビジネスのノウハウが自クラブにあるわけではないので、クラブが事業の全てを担うのはリスクなのではという、もっともなアドバイスではありました。
それでローカルエナジーさんとも協議を重ねてビジネスモデルを模索し、ローカルエナジーが主体となり、われわれが農業の部分を担う形で、スタートを切ることになりました。

©SC TOTTORI

瀬田それでいうと、私たちは売電先の決定にもハードルがありました。売電をするのにも電気小売業者の登録が必要なので、そこに関しては再生可能エネルギー100%の電力小売をしているUPDATERさんに入ってもらえることになったのですが、売電先は自分たちで見つけなければなりませんでした。
GRASS ROOTS FARMとして使用してきた圃場、ソーラーシェアリングの圃場、そして練習場である「アツマーレ」が全て城里町にあるため、まずは城里町に販売の提案をしました。 アツマーレはホーリーホックが指定管理を取っているわけではなく、城里町が保有しているため、当初はアツマーレで使用する電気をソーラーシェアリングでカバーするのが、最もきれいな循環が生まれるのではと考えたんですね。
しかし、ソーラーシェアリングで想定している発電量と、アツマーレで使用する電気量が全く違うことが分かりました。
また、城里町は電気の自由化に関して先進的であったため、入札の兼ね合いなどもあり売電の契約についても、条件面などでハードルがありました。

― その課題に対して、どのような解決を図ったのでしょうか。

瀬田一度行き詰ってしまったかと思ったのですが、城里町から逆提案をいただきまして。道の駅であれば、ソーラーシェアリングの発電量とある程度見合うのではというお話でした。
そしてソーラー発電は日中の発電量が多く夜間が少なくなるのですが、日中の来客が多く電力も多く必要とする、道の駅における消費電力の山ともおおよそ合致することが分かりました。 ただ精査をしていく中で、全てをソーラーシェアリングの発電で賄おうとすると、季節による発電量の違いなどもあり、消費電力量に対して発電量が足りなかったり、逆に余ったりすることで、道の駅、UPDATERさん、ホーリーホックのいずれかが、契約面もしくは金銭面において負荷がかかる懸念点も顕在化しました。
しかし協議を重ねる中で出てきたのが、城里町にあるもう一つの道の駅の存在です。
1カ所の道の駅のみで電力の売買を完結しようとするとどうしても余剰のリスクがあるのですが、2カ所に電力の供給先を分散して残りをUPDATERから購入することで、それが回避できるのではないかという選択肢が浮上しました。
ここからさらに単価設定など、料金面の交渉などにもかなり時間がかかりましたし交渉の過程もかなりハードではありましたが、最終的に2カ所の道の駅に売電することで合意しました。

辻井売電の単価はさまざまな要素が絡んでくるので、算出がものすごく難しいんですよね。瀬田さんは知識がないところから本当にたくさん勉強されて、短期間で事業を立ち上げるまでに至っているのは、純粋にすごいと思います。

塚野われわれもローカルエナジーさんから話を聞いていると、仕入れ価格も驚くくらい上下が激しくて、電力ビジネスの難しさを感じます。

辻井今回の取り組みですごくいいなと思ったのは、行政との交渉がかなりハードでありながらも、道の駅が使う電力を100%再生可能エネルギーにしたところですよね。
電気は目に見えないものではありますが、再生可能エネルギー100%にすることは社会にとってすごくいいことなので、それを率先してできるのはやっぱりクラブの価値だと思います。

瀬田辻井さんの言葉を受けて、取り組みの意義を改めて認識しました。茨城県内で脱炭素先行地域に選ばれているのはつくば市のみなんですが、実はわれわれのホームタウン15市町村のうち、2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明を行っているのは13市町村に上り、城里町もその中に入っています。
そして城里町にもサステナビリティについて向き合う部署ができたので、連携してやっていきましょうとなったんです。
なので今回の取り組みは、自治体にとって官民共創で再生可能エネルギーに関する実績をつくったという意味では、決して小さくないメリットがあったのではと思います。
実際に今回のことが実現して、他のJクラブのホームタウンに対して展開していくポテンシャルを証明できたと思いますし、一つのモデルケースになったとも感じています。

©MITO HOLLYHOCK

塚野われわれは、売電先についてはローカルエナジーさんのおかげで苦労しなかったんですが、彼らの話を聞いていてもまだまだポテンシャルというか、良くしていく余地はあると感じます。
というのも鳥取県だけでもかなりの額の電力を外から購入しているので、それを地域の発電で賄えるようになれば、その予算を他に回し、地域のためになることに使える。そして自治体だけではできないことがあったときに、われわれのようなJクラブをを使ってくれたらと考えています。
これはソーラーシェアリングに限らずなんですが、官民で連携して何かをしようとしたときに、一般的な民間企業だと「なぜそこと組むのか」という大義名分のようなものを求められることが少なからずあると思います。ただ、Jクラブには不思議とそういったことがなく、地域の皆さんからも受け入れられやすいというのはあるんじゃないですかね。それはJクラブの強みだと思います。
なので、自治体が困っている時にはJクラブが率先して「われわれにできることはありますか」と、コミュニケーションを取ることはすごく大切なんじゃないでしょうか。Jクラブ以外に同じようなことができる民間団体って、なかなか思いつかないので。

辻井まさにJリーグ、Jクラブが持つ価値ですね。

― それぞれの地域に根差した事業を展開されていると改めて感じましたが、今後の展望についてお考えになっていることはありますか。

瀬田われわれは圃場で野菜作りをしているのですが、現在その栽培については有機農業を行っていくための、有機JAS認定の取得を目指しています。化学肥料は作るのにも、運んでくるのにもCO2を排出しますが、有機農法だと化学肥料を使うことによるCO2の排出量を削減するばかりか、地中の生物多様性が高まり、結果的に光合成を通じた地中の炭素固定量が高まることでCO2の削減にもつながるため、「有機農業自体が気候アクション」なのです。
茨城は全国トップクラスの農業産出額を誇る農業県だからこそ、有機農業に積極的に取り組む地域にしていきたいと思っています。
ただ有機農業についてはやはり通常の農業以上に難しさもあるので、JAの協力の下、時間をかけて形にしてきました。
今後はわれわれが手がける農業において、障がい者の方々にお仕事としてお手伝いしていただくことも視野に入れて、小さくても経済を回していくことをしていきたいです。
そしてホーリーホックの畑を地域コミュニティの場にして、われわれが得たノウハウを他の農家さんにもシェアしたり、子どもたちに教育として届けていったりしたいと考えています。
子どもに対する教育についても、ただの座学だと身に付きづらい部分もあるかもしれませんが、そこにわれわれの強みであるサッカーを取り入れていきたいですね。
ゲーミフィケーションといって、サッカーのゲーム性を教育に取り入れて、自然と知識を身に付ける。そうやって大切なことを次世代に伝えていけたらと思います。
地球規模で考えたらわれわれのアクション自体は微力かもしれませんが、仲間を増やして、「新しい当たり前」を先導してつくっていくことで、10年後、20年後に「茨城県出身の人たちってなんだかいけてるよね」というブランディングに、水戸ホーリーホックという存在が寄与できているといいのかなと考えています。

辻井そうですね。例えばホーリーホックやガイナーレが自クラブのみの力であと50個ソーラーシェアリングをつくりますというのも、Jリーグが今の助成金を10倍にしますというのも現実的ではないです。
ただ、われわれがアクションを起こすことで、世の中や地域の関心が集まったり、ステークホルダーが集まったりすることで、仲間が増えていくのが大きな役割なんじゃないかなと思います。アクションの輪が広がっていった時に、きっかけはJクラブだったよねとなるのが、われわれが持つ本当の価値なんだと。

塚野われわれとしては農事業を担っている身として、まずは芝をしっかり育てることが大前提だと考えています。
芝生をしっかり育てれば、芝生のいい匂いとか、刈り上げたときのきれいさとかがきっかけとなって、Jクラブが何かやっているぞと人が集まってくるんですよ。
なのでそれを利用して、年に一度でも二度でもいいんですが、芝生の上でカニ汁パーティーをしますって言ったら、地域の皆さんはきっと集まってくださるんですよね。
そこでみんなで芝生の上をごろごろして、楽しんでもらうような場をつくって、「あの芝生が、ソーラーシェアリングがあって良かったね」となればいいなと思います。
ありがたいことに事業面での経済合理性は担保されているので、ソーラーシェアリングを拡大させて、米子と境港の間に走っているゲゲゲの鬼太郎列車が走るJR境線沿いに、カラフルなソーラーシェアリングが広がっている光景をつくるのもいいなと思います。

辻井それができたら一大観光地になるんじゃないですかね。

塚野それを見るために人が集まって、地域がにぎやかになればいいですよね。

瀬田ロールモデルとして一定の評価をいただいていることはありがたいですが、事業開始がゴールではなく、中長期的に事業を継続していくことも大切だと考えています。
特にわれわれは城里町との契約期間も長期にわたるので、しっかりと継続していくことで本当の意味でのロールモデルだといえるのではないかと思います。
一方でこれから事業化を検討している方たちに伝えたいのは、宣言をしてしまうこともステークホルダーを巻き込むのには有効だということです。われわれもソーラーシェアリング事業を立ち上げたいと思ったときに、補助金や売電価格、電気小売事業者、パートナー企業など、ほとんど何も決まっていない状態でした。
しかし宣言をすることで、さまざまな方からの注目を集めて仲間も増えましたし、自分たちも宣言したからにはやらなくてはという推進力になりました。
そして現在他クラブからもいくつか相談をいただいているのですが、極力つまびらかに情報をお伝えするようにしています。そうすることで「自分たちにもできるかも」と、輪が広がっていくことになると思うので。

塚野継続性というのはやはり意識したいですね。われわれは米子市・境港市が脱炭素先行地域に選ばれたことがきっかけになったものの、やはり「ビジネスモデルができました」で終わりではなく、継続的にステークホルダーを巻き込み続けて、輪を広げていくことが大切だと思います。

辻井繰り返しになってしまいますが、それをできるのがJクラブならではの価値だと思います。この輪を広げていくためにも、Jリーグとしても努力を続けていきますし、水戸ホーリーホック、ガイナーレ鳥取という2つのクラブの今後にも期待しています。

プロフィール

株式会社フットボールクラブ水戸ホーリーホック

執行役員/事業統括本部長 瀬田 元吾

株式会社SC鳥取

代表取締役社長 塚野 真樹

公益社団法人 日本プロサッカーリーグ

執行役員(サステナビリティ領域担当) 辻井 伸行

Column:Jクラブが再生可能エネルギー普及に取り組む意義と期待

Jリーグ気候アクションパートナー
株式会社エスプールブルードットグリーン 取締役社長 八林 公平

地域に根差すJクラブは今、スポーツ競技としての感動を与えるだけでなく、地域の未来を共に創る存在としての新たな役割を確実に担っています。
気候変動による猛暑や豪雨の影響を受けるのは選手だけではありません。観客はもとより、交通機関、宿泊施設、取材メディア、スタジアム運営管理など試合に関わるさまざまな人々がイレギュラーな対応を求められることが増えています。また、子どもたちは安心してサッカーを続けられるのかと不安を抱くこともあるように思います。
Jクラブは、サッカーができる環境を持続可能なものとするためにも、こうしたJクラブを支える関係者への影響を改めて認識し、行動しなければなりません。
ガイナーレ鳥取や水戸ホーリーホックのソーラーシェアリングの取り組みは、再エネ導入でCO2を減らすだけでなく、地域の農業課題の解決や人的交流の拡大、災害時の対応力強化といった複数の効果をもたらすものです。さらに、再エネの地産地消は、域外に流出していたエネルギー購入費用が地域内で循環し、地域経済の強じん化にもつながります。Jクラブが地域のプラットフォーマーとして、多様な関係者を巻き込みながら、持続可能な地域社会へと導いていこうとする好例といえます。
日本政府は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再エネの主力電源化や地域脱炭素ロードマップを掲げ、自治体や民間企業の取り組みを積極的に支援しています。Jクラブが再エネの導入に取り組むことは、こうした国策の方向性と軌を一にしており、地域社会における脱炭素化の推進役として極めて重要な意義を持ちます。
社会の変革には、まず小さな成功事例を人々へ見せることや体感してもらうことが大切なプロセスです。持続可能な地域の未来に向けた再エネの活用はまだ始まったばかりであり、多くのモデルケースが必要とされています。
Jクラブが各地で再エネを活用した気候アクションを率先して示すことにより、Jクラブの持続可能性と地域からの信頼を高め、プロサッカークラブとしての価値を高めることができると私は確信しています。「Jリーグ地域再生可能エネルギー助成金」の活用によってJクラブの気候アクションがさらに広がることを期待しています。

※掲載情報は2025年12月22日時点のものです

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