アカデミーゲームプロジェクト
~世界水準の試合環境をつくる
理想のゲームプログラム
2030フットボールビジョン達成に向け、世界で活躍できる選手を育てるためには、国内の試合環境(ゲーム環境、ゲームプログラム)を世界水準にすることが必要です。これまでにもJリーグには国内大会のみならず国際大会を含めた試合環境がありましたが、常に進化する世界のフットボールで10年後に活躍できる選手を育てるためには、ゲームプログラムも同じように進化する必要があります。Jリーグでは選手の個別育成プラン(IDP)の視点とも連動させながら、各Jクラブが選手それぞれに最適な試合機会をどのように提供できるかという視点で理想のゲームプログラムを考えています。
ストレッチと統合
Jリーグでは、各クラブが選手の年代という垣根をなくし、「ストレッチと統合」※の機会を、それぞれのクラブの考えにより計画し選手に提供できることが理想だと考えています。そしてそのストレッチと統合の機会は、中学生・高校生・プロフェッショナルのカテゴリーをも超越し、選手個々の成長スピードに最適なタイミングで提供される必要があります。またJリーグは、各アカデミーの選手だけではなくホームタウンの選手にもその機会を提供しています。例えば、2021シーズンより「Jリーグユース選手権(通称:Jユースリーグ)」は、参加するJクラブに所属しない選手も1試合最大2名まで試合に出場できるルールになっています。
※Jリーグでは、同年代の試合で安定して高いパフォーマンスを示している選手に対し、その選手の個別育成プラン(IDP)を活用しながら、上の年代への飛び級による限界へのチャレンジと、本来の年代に戻り見つかった課題を乗り越え、さらなる成長の後押しをする計画的な取り組みを「ストレッチと統合」と呼んでいます。
試合でむすびつく6プロジェクト
Project DNAの6つのプロジェクトは、ゲームプログラムによってひとつにむすびつきます。選手は試合(ゲーム)で、それまでの練習の成果を発揮することができます。コーチは試合(ゲーム)を通して、選手がどのくらい選手に求められる要素を獲得できたかを知ることができます。さらに各アカデミーにおけるコーチングカリキュラムの有効性を確認することもできます。試合(ゲーム)には、アカデミーに関わるすべての選手・スタッフの努力の成果が現れるといっても過言ではありません。
理想のゲームプログラムは日本のサッカーにかかわる多くの人たちとともに常に進化させる必要があり、選手にとってはアカデミーとトップチームをむすぶ大切なパスウェイ(道しるべ)のひとつです。
Jリーグが主催するゲームプログラム
・NEXT GENERATION MATCH
2010年にフレンドリーマッチとして始まり、U-18Jリーグ選抜と日本高校サッカー選抜がFUJI XEROX SUPER CUPに先立って対戦してきました。2020シーズンから、前シーズンのJ1優勝クラブのアカデミーと日本高校サッカー選抜が出場。「U-18年代に活躍の場を提供することで、将来的な日本サッカー界全体の活性化に寄与する」ことを目的としています。
・Jエリートリーグ(2020シーズン中止、2021シーズンより実施)
ゲームプログラムのなかでもっともJリーグに近いJエリートリーグは、プロサッカー選手としての試合経験が必要なトップチームの選手と各アカデミーの選手が同じピッチでプレーをすることにより、各クラブの掲げるフットボールフィロソフィーに沿いながら、それぞれの目標を達成できるよう新設しました。この大会は特に日本サッカー界の課題となっているポストユース(19歳から21歳まで)に対する安定した試合機会を提供することを目的としており、世界が日本の若い才能を発見するためのプラットフォームとして、投資収益率(ROI)を高める機会をつくりだします。アカデミーの選手にとってはトップチームへ強くつながるパスウェイのひとつであり、トップチームのスタッフにとってはアカデミーでどのような選手が準備できているかを見いだす機会です。アカデミーのエリートとして成長した選手たちはトップチームの選手とさらにレベルの高い環境でプレーすることによりストレッチと統合の機会を得ます。
また、Jエリートリーグには、参加するクラブの所属選手だけではなく、例えば地元の高校に所属する選手やアカデミーから大学へ進学した選手などにも試合に出場する機会、つまりストレッチと統合の機会を提供できるルールがあります。今後の活躍が期待される若い選手は、本大会に出場することでホームタウンでの知名度を少しずつ高め、地域密着型のJクラブの一員としての自覚と責任感を得ることが期待できます。
・Jリーグ U-14
2008年創設のこの大会は、試合機会が安定しないU-14年代の選手に、定期的な試合出場の場を提供し、個の育成を行うことを目的として開催しています。Jリーグのアカデミーチームとタウンクラブチームが参加しています。ポラリス、メトロポリタン、ボルケーノ、サザンクロスという名称の4地域をベースに、複数のグループに分かれて開催し、各グループはホームアンドアウェイによるリーグ戦方式。各グループの優勝チーム、MVP、最多得点者を表彰します。
・Jリーグユース選手権:Jユースカップ(2020シーズン中止)とJユースリーグ(2021シーズンより)
1994年創設の大会で、2019シーズンで第27回を迎えました。2020シーズンは新型コロナウィルスの影響で中止となりましたが、2021シーズンは従来のノックアウト方式に変わり、グループステージとノックアウトステージの大会方式となりました。原則Jリーグの全アカデミーが参加し、近年では準決勝、決勝をトップチームが使用するフットボール専用スタジアムで開催し、優勝チーム、準優勝チーム、3位チーム、MVP、最多得点者(得点王として)を表彰しています。2020シーズンは新型コロナウィルスの影響で中止となりましたが、2021シーズンからは新たな大会方式となり、U-17の選手を中心とした56チームが参加します。
・Jリーグインターナショナルユースカップ(2020、2021シーズン中止)
2014年に創設された大会で、Jクラブのアカデミーがあまりなじみのない海外チームのプレースタイルに対して、自分たちの力を試す機会を提供しています。この大会は例年12月に開催され、同年のJリーグユース選手権の上位4チームと海外の招待4チームが2グループに分かれ、総当たりのグループステージ後に両グループの同順位同士が順位決定戦を行ってきました。大会期間中の文化交流イベントを含め、U-17という若い世代だけでなく、国内外のコーチがオンザピッチでもオフザピッチでも互いに学び合える魅力的な機会として、高い評価を得ています。優勝チーム、準優勝チーム、3位チーム、MVP、最多得点者(得点王として)、ベストゴールキーパー(ベストグローブ賞として)、そしてフェアプレー賞の表彰が行われます。
これまでのゲームプログラム
・JリーグU-16チャレンジリーグ(2009~2018)プロ準備期として心身の発達が著しい年代に対して安定的な試合機会を提供するために、既存のU-18の大会以外の新たなリーグ戦を開催することを目指しJクラブのアカデミーを対象に開催した大会です。3月末に短期のリーグ戦を全国数地域で分散開催し、アジア提携国からもチームを招くなど、新シーズンにU-17となる選手に貴重な試合の場を提供してきました。この大会をきっかけとしてU-17の選手を中心としたリーグ戦開催に向けた貴重な経験と検討の機会を得ることもできています。
・JリーグU-17チャレンジカップ(2015~2018)主にJリーグU-16チャレンジリーグの成績上位チームを対象に開催した短期の国際大会です。新シーズンを迎えU-17となった選手に、特にアジアの強豪、韓国のチームをはじめ、欧州や中東、アフリカなどの強豪チームや韓国からのレフリーを招くことにより、日本国内にいながら海外の試合経験をする機会を提供してきました。この大会もU-16チャレンジリーグ同様に、U-17の選手を中心としたリーグ戦開催に向けた貴重な経験と検討の機会を得ることができた大会といえます。
・Jリーグ選抜海外キャンプ(2005~2018)Jクラブのアカデミーに所属する育成年代の選手に、海外での国際試合の経験を通じた競技力の向上と、海外文化に触れ、現地の人々との交流を通じて豊かな人間性を育むことを目的に、選抜チームにより実施した海外キャンプです。ポテンシャルの高い選手同士でのトレーニングや試合を通じて選手に刺激を与え、サッカーの新しい考え方への「気づき」の機会とし、選抜チームを編成するために国内でのトレーニングキャンプも行ってきました。各クラブから参加するコーチやレフリーにも国際経験の場を提供することができた取り組みです。
近年では、より多くの選手に機会提供できるクラブ単位での海外経験の支援に切り替わってきています。