Press Release プレスリリース
2025.4.22
Jリーグは、未来の子どもたちが安全にスポーツを楽しむことのできる地球環境を目指し、気候変動の問題解決のためのアクション(以下、気候アクション)を推進しています。その一環として、Jリーグはスポーツを通じた環境サステナビリティの取り組みを数値化し、その進捗や目指すべき方向性をわかりやすく把握できる仕組みとして、国際的なイニシアチブ「Sport Positive League (スポーツポジティブリーグ、略称SPL) 」への参画を決定しました。
SPLは、サッカークラブの気候アクションを数値化し、その進捗や目指すべき方向性を一目で把握できる仕組みです。2025年現在、イングランドプレミアリーグをはじめ、欧州の4つのプロサッカーリーグが参画しており、Jリーグは5番目、アジアでは初の参画となります。
またSPLの参画に先立ち、気候アクションに関する取り組みの推進を図る目的で、「Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度」を新たに創設しました。さらに、SPLの参画を推進する「Jリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクト」を発足し、本日の理事会で報告しましたので併せてお知らせします。
Sport Positive Leagueの表示例
出典:Sports Positive League, “Premier League 2022”。SPL公式サイト(登録制)にて各リーグの統括レポートや各クラブの具体的な取り組みを紹介
1. JリーグのSport Positive Leagueへの参画
日本のスポーツ界でも、様々な気候アクションが始まっていますが、その意義と可能性は、まだ十分に評価されていないと考えています。気候アクションは、環境負荷を低減させるだけではなく、「気候変動の緩和」という社会全体の大きな目標に向けて、Jクラブには、その影響力を活かした独自の貢献が期待されています。
Jリーグは全60クラブとともにSPLに参画します。単に気候アクションに関するスコアや順位を競うだけでなく、
ファン・サポーター、メディア、ホームタウン、企業、自治体等のクラブを取り巻く関係者にとって、スポーツクラブの環境への貢献状況や、地域特有の環境課題に関する客観的な情報にアクセスしやすくなる他、世界のスポーツリーグと比較した際のJリーグの現在地を確認しながら、気候アクションを進捗することができます。
さらに、環境負荷を減らすための具体的なアイデアや改善策などを、世界の様々な先進クラブから学び生かせるプラットフォームとしての役割も期待されます。この仕組みによって、地域資源を活かしながら、脱炭素に向けた活動が広がり、自然環境の保全や再生を推進する地域のハブとして、Jクラブが地域からより信頼される存在になることを目指します。
【参画の概要と主なスケジュール】
l 2025年はSPLへの参画の準備期間と位置づけ、2026年移行期の特別大会より正式にエントリーします。
l 2025年の準備期間では、SPLとJリーグ間のヒアリングを経て、気候変動対策にとって重要な12項目に関する
SPL策定のマトリクスをベースとしつつ、Jリーグ独自の評価基準を設定します。併行してJクラブはJリーグが作成するハンドブックを参照しつつ、SPLの仕組みや、評価基準、気候変動対策にとって重要な12項目や活動の進め方について理解を深めます。
l 手引書となる「Jリーグ気候アクションハンドブック」は2025年6月頃を目途に発行し、一般にも公開予定です。
l 第1回のエントリーは、2026年の移行期の特別大会までの期間を対象に、Jクラブが取り組む気候アクションがSPLへ報告され、2026年秋を目途に、SPLより初回となる評価基準に基づくスコアと順位が初めて提示されます。
l スコアと順位が提示される2026年秋以降は、ランキング上位のクラブがより多くの配分を得られる活動助成金(正式名称 Jリーグサステナビリティ事業活動助成金)の傾斜配分を導入します。
l SPLのスコア・ランキングが出る2026年秋までの活動については、Jリーグサステナビリティ事業活動助成金を均等配分で交付します。
【 Sport Positive Leagueとは】
Sport Positive Leagueは、クラブの気候アクションを数値化し、その進捗や目指すべき方向性を一目で把握できる仕組みです。参画リーグの所属クラブを対象に、気候変動対策にとって重要な12項目の取り組み状況について、スポーツ界特有の環境パフォーマンス、例えば、試合会場や施設のエネルギー効率、再生可能エネルギーの利用、リサイクルや廃棄物削減の取り組み、ファンや選手の移動に伴うCO2排出量の管理、ホームタウンとの連携や選手等への環境教育の推進などの多岐にわたる活動の効果をデータとして収集します。
その後、SPL独自のスコアリングシステムで定量的に効果分析が行われ、エネルギー、廃棄物、交通など、カテゴリーテーマ別に加重を設けて総合点を算出。スポーツファンに馴染みのある順位表形式でSPLからリーグごとにスコ
アが出され、参画するクラブが横断的に紹介されます。データ駆動型のアプローチにより、環境への取り組みが可視化され、スコアを公表することで最善策の共有を促進し、より高い目標を追求する動機付けが仕組みとして備えられている点が特徴です。
【スポーツポジティブリーグ概要】
名称 | Sports Positive League ( スポーツポジティブリーグ、略称SPL ) |
仕組み | サッカークラブの気候アクションを数値化し、その進捗や目指すべき方向性をわかりやすく把握できる仕組み。 SPLへ各クラブから報告された気候変動対策にとって重要な12項目の取り組み状況について、独自の評価基準マトリクスを用いて定量的に効果分析が行われる。エネルギー、廃棄物、交通など、カテゴリーテーマ別に加重を設けて総合点を算出。SPLからスコアとリーグテーブル(順位表)が公表され、活動内容とともに参画する全クラブが横断的に紹介される。 |
運営組織 | SPORT POSITIVE (イギリス) / 公式サイト https://www.sportpositive.org/ |
創設 | 2018年、創設者 クレア・プール (UEFA環境諮問委員 他) |
その他参画リーグ | プレミアリーグ(イングランド)、EFLチャンピオンシップ(イングランド) ブンデスリーガ(ドイツ)、リーグアン(フランス) Jリーグは2025年の準備期間を経て、2026年1月から正式に参画(アジア初) |
対象事業 | 参画リーグのクラブが実施する気候アクションのうち下記の12のカテゴリーに関する事業 (1)ポリシーとコミットメント、レポーティング、(2)再生可能エネルギー、(3)エネルギー効率 (4)環境負荷の少ない移動手段、(5)使い捨てプラスチック削減・廃止、(6)ゴミの削減管理 (7)水の効率的な利用、(8)プラントベース・低炭素食品、(9)生物多様性、(10)教育 (11)コミュニケーション、(12)持続可能な調達 |
ランキングと評価 | 評価と公表のスケジュールは各リーグごとに設定される |
導入後の変化例 | SPL導入後の変化として、2018年から参画したイングランドプレミアリーグの場合、2023年には16クラブがウェブサイトにサステナビリティページを開設し、6クラブが「CO2排出量ネットゼロ」の目標を掲げている。さらにトップ選手がリサイクル推進や電気自動車利用、植物性食品摂取などを紹介する動画に出演し、気候アクションに参画。こうした動きはクラブの経営にも好影響をもたらしている。 |
2. Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度の創設 (2025年4月~)
SPLの導入に先立ち、気候アクションに関する取り組みの推進を図る目的で、Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度を創設しました。本制度は年度ごとに配布され、第1回は2025年4月1日から2026年3月15日までに実施する活動が助成対象となり、2026年のSPL参画後はSPLの活動助成金として運用されます。
名称 | Jリーグサステナビリティ事業活動助成金 |
目的 | Jクラブが実施する気候アクションに関するロードマップ又は事業計画の策定及び実践、特にSport Positive League(SPL)で定義されている12項目に関する事業の推進を図る |
対象事業 | Jクラブが実施する気候アクションであり、 Sport Positive Leagueで評価カテゴリーとして定義されている12のカテゴリーに関する事業 (1)ポリシーとコミットメント、レポーティング、(2)再生可能エネルギー、(3)エネルギー効率 (4)環境負荷の少ない移動手段、(5)使い捨てプラスチック削減・廃止、(6)ゴミの削減管理 (7)水の効率的な利用、(8)プラントベース・低炭素食品、(9)生物多様性、(10)教育 (11)コミュニケーション、(12)持続可能な調達 |
対象活動地域 | 原則として自クラブのホームタウン |
対象期間 | 第1回 2025年4月1日から2026年3月15日 第2回 2026年4月1日から2027年3月15日(予定) 第3回以降は2026年のSPLのランキングに応じた傾斜配分を予定 |
第1回の助成総額 | 2億4千万円(1クラブの申請上限額400万円) ※ 日本財団の助成制度を活用 |
クラブ申請期間 | 2025年3月1日~2025年5月30日 |
3. Jリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクトの発足 (2025年4月~)
SPLの参画にあわせ、Jリーグは「サステナビリティ事業活性化プロジェクト」の発足を本日の理事会で報告しました。Jリーグは気候アクションロードマップにおいて、2030年までにJリーグ全体で排出するCO2を 50%削減する(注1)ことを掲げ、カーボンニュートラルな地域社会の実現に取り組んでいます。
本プロジェクトはこれまでにJリーグやJクラブが個々に実施していた気候アクションを、リーグ全体でより高い効果をもたらすアクションへ変質させることを目指し、プロジェクトの中でSPL導入を含む9つの関連施策を並行して実施してまいります。
SPLの導入を含むプロジェクトの原資として、先日発表した明治安田Jリーグワールドチャレンジ2025 presented by日本財団のチャリティパートナーでもある、公益財団法人 日本財団の新たな助成制度を活用します。またプロジェクトの進捗は、Jリーグ気候アクションサイトの他、Jリーグのサステナビリティ領域に関する活動レポート(仮称)を発行し、定期的に公表予定です。SPLの参画、そしてJリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクトを通じ、Jリーグ・Jクラブのネットワークを生かした統合的なアクションとしてサステナビリティ事業を一層推進してまいります。
(注1)CO2排出量初年度対比、2026年より法人全体の事業活動に関してScope1,2,3を算定予定
【Jリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクの概要と8つの重点施策】
概要
名称 | Jリーグサステナビリティ事業活性化プロジェクト |
目的 | JリーグとJクラブのサステナビリティ事業を戦略的かつ効果的に推進するためのプラットフォームを作り、活動を後押しする |
プロジェクト総額 | 3.7億円 (最大) |
備考 | 日本財団の助成プログラムを活用 |
8つの重点施策
施策名 | 実施内容 | 実施時期 |
1. Sport Positive Leagueへの参画 | リーグ全体の気候アクションの可視化 | 2026年1月より導入に向けて 2025年4月より準備を開始 |
2. 活動助成金制度の創設と配分 | クラブのSPL参画支援を使途した活動原資 | 第1回は2025年4月~2026年3月16日の活動が対象 第2回以降はSPL運用に組み込む |
3. Jリーグ気候アクションハンドブックの作成、配布、援用支援 | クラブのSPL参画支援を使途した手引き | 2025年6月頃の発行を目指す |
4. ロードマップ策定支援キット開発/提供、教育プログラム開発/提供 | アクションの支援 | 2025年上期開発、それ以降提供予定 |
5. 気候アクション動画の制作と発信 | 情報発信 (気候アクションの啓発に資する動画の制作) | 2025年度中に作成 |
6. Jリーグのサステナビリティ領域に関する活動レポート(仮称)の作成と情報発信 | 情報発信 (各年度のクラブの気候アクションの取り組みをまとめレポートを発行) | 2024年版について2025年5月頃発行予定 |
7. 国内外視察 | 情報収集 | 2025年度中に実施検討中 |
8. ワークショップ・研修会開催 | 情報収集とアクション支援 | 2025年度中に実施検討中 |